京谷研究室
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研究内容の概要

当研究分野では、材料合成の反応場をナノメータレベルで制御することでカーボン材料をはじめとする種々の新しい無機材料とその複合体の設計と開発を行っている。さらに、このように高度に構造制御された無機ナノマテリアルを電子素子、電池部材、エネルギー貯蔵材、ナノバイオマテリアルなどとして利用する応用研究を進めている。


京谷研の主な研究テーマ

均一なサイズのカーボンナノチューブ配列体「カーボンナノ剣山」の合成と太陽電池/燃料電池電極への応用
水に分散する「カーボンナノ試験管」の合成と薬物輸送(ドラッグデリバリー)/遺伝子輸送(ジーンデリバリー)への応用
規則性ミクロ多孔性炭素「カーボンナノジャングルジム」の合成とエネルギー貯蔵材としての利用
Si/カーボンナノ複合体の合成とリチウムイオン電池への応用
グラフェンをベースとした炭素薄膜の大量合成法の開発と透明電極/回路配線への応用
メソポーラスシリカのナノ炭素被覆と生体物質担体への応用


研究 Pick Up  直径と長さの揃った均一なサイズのカーボンナノチューブの鋳型合成

当研究室では、規則的な直線孔を持つAlの陽極酸化皮膜を鋳型として利用することで、太さと長さがナノメーターレベルで厳密に制御されたナノチューブの合成に世界で初めて成功しました。

日本経済新聞の記事
河北新報の記事

チューブの長さ 1000 nm500 nm200 nm

Fig. 様々な長さのカーボンナノチューブの電子顕微鏡写

文献
・Kyotani T, Tsai LF, Tomita A. Formation of ultrafine carbon tubes by using an anodic aluminum-oxide film as a template. Chem Mater 1995; 7:1427-8.
・Kyotani T, Tsai LF, Tomita A. Preparation of ultrafine carbon tubes in nanochannels of an anodic aluminum oxide film. Chem Mater 1996; 8:2109-13.




研究 Pick Up  磁性金属を内包するカーボンナノ試験管の合成

アルミニウム陽極酸化皮膜(AAO)は一次元状のナノ細孔を有し、細孔内に炭素を堆積させることで均一なサイズのカーボンナノチューブやカーボンナノ試験管を調製できます。本研究では下図に示すようにAAOに炭素を堆積させてから、カーボンナノ試験管の中に電気メッキ法により磁性金属(Fe-Ni合金)を析出させ、AAOを除去することで磁性金属を内包するカーボンナノ試験管を合成することに成功しました。


         図 磁性金属を内包するカーボンナノ試験管の調製法

文献
・"Controlled filling of Permalloy into one-end-opened carbon nanotubes", Xiao-Hui Wang, Hironori Orikasa, Nobuhiro Inokuma, Quan-Hong Yang, Peng-Xiang Hou, Hirotaka Oshima, Kenichi Itoh, Takashi Kyotani, J. Mater. Chem., 17, 986-991 (2007).




研究 Pick Up  水に分散し、磁場応答性を有するカーボンナノ試験管

上記の研究で開発した磁性金属を内包するカーボンナノ試験管を過酸化水素水で表面親水化処理することで、水分散性にすることができます。これは、電気二重層の存在に起因する反発力が磁気的引力に勝っているためです。このナノ試験管の水分散液を磁石を近づけると、下図に示すように磁石に引き寄せられます。また磁石を遠ざけて振とうすると、容易に再分散します。このような磁場応答性を有するナノ試験管はバイオ分野での応用が期待できます。

        
   図 水に分散した磁性金属内包カーボンナノ試験管が磁石に引き寄せられる様子

文献
・"Template synthesis of water-dispersible and magnetically responsive carbon nano test tubes", Hironori Orikasa, Nobuhiro Inokuma, Somlak Ittisanronnachai, Xiao-Hui Wang, Osamu Kitakami, Takashi Kyotani, Chem. Commun., 2215-2217 (2008).




研究 Pick Up  薬物のモデル化合物を内包し、水に分散するカーボンナノ試験管

本研究室で合成したカーボンナノ試験管は水、エタノール、アセトンに容易に分散します。我々はカーボンナノ試験管のこのような性質を活用できる分野としてバイオ分野に注目し、薬物送達システムのキャリヤーとしての活用を検討しています。そのモデル実験として、薬物の代わりに色素を入れたカーボンナノ試験管をポリマーで栓をし、水、エタノール、アセトンに分散液させました(下図の上部)。この分散液を遠心分離し、カーボンを沈降させると、アセトン溶媒の場合は上澄み液が赤くなりました。(下図の下部)。これはポリマーの栓がアセトンに溶け、カーボンナノ試験管の中身である色素がアセトンに溶解したためです。一方、水、エタノールにポリマーの栓は溶けないので、色素はナノ試験管の内部に留まっており、上澄み液は着色されません。以上の実験結果はカーボンナノ試験管の中に薬を閉じ込めることができることを証明しており、ナノ試験管は薬物送達システムのキャリヤーとしての応用が期待できます。

           
         図  種々の溶媒に分散させたカーボンナノ試験管

文献
・"Small molecules delivery using carbon nano-test-tubes", Somlak Ittisanronnachai, Hironori Orikasa, Nobuhiro Inokuma, Yoshihiro Uozu, Takashi Kyotani, Carbon, 46, 1361-1363 (2008).




研究 Pick Up  カーボンナノジャングルジムの鋳型合成

当研究室では、規則的な3次元細孔を持つY型ゼオライトを鋳型として利用することで、ナノグラフェンが3次元規則連結したゼオライト鋳型炭素(カーボンナノジャングルジム)の合成に世界で初めて成功しました。



【ゼオライト鋳型炭素(カーボンナノジャングルジム)の特徴】
・バッキーボウル(buckybowl)状のお椀状ナノグラフェンが3次元的に規則連結した構造!
・直径約1.2 nmのミクロ孔が3次元的に規則配列!
・炭素材料として世界最大の比表面積(約4000 m2/g)とミクロ孔容積(約1.8 cm3/g)!

文献
・Kyotani T, Nagai T, Inoue S, Tomita A. Formation of new type of porous carbon by carbonization in zeolite nanochannels. Chem Mater 1997; 9:609-15.
・Ma ZX, Kyotani T, Tomita A. Preparation of a high surface area microporous carbon having the structural regularity of Y zeolite. Chem Commun 2000; 2365-6.
・Matsuoka K, Yamagishi Y, Yamazaki T, Setoyama N, Tomita A, Kyotani T. Extremely high microporosity and sharp pore size distribution of a large surface area carbon prepared in the nanochannels of zeolite Y. Carbon 2005; 43:876-9.
・Hirotomo Nishihara*, Quan-Hong Yang*, Peng-Xiang Hou, Masashi Unno, Seigo Yamauchi, Riichiro Saito, Juan I. Paredes, Amelia Martinez-Alonso, Juan M.D. Tascon, Yohei Sato, Masami Terauchi, Takashi Kyotani, "A Possible Buckybowl-Like Structure of Zeolite Templated Carbon", Carbon, 47, 1220-1230 (2009).




研究 Pick Up  カーボンナノジャングルジムの電気二重層キャパシタへの応用

電気二重層キャパシタ(EDLC)は、電極/電解液界面の電気二重層に電荷が蓄積されることを利用した大容量のキャパシタです。二次電池が化学反応を利用して電気を蓄えるのに対し、EDLCはイオンの物理吸着を利用して電気を蓄えます。二次電池と比較して容量は小さいものの、急速充電が可能、高出力、長寿命といった利点があります。
カーボンナノジャングルジムは超高表面積であるため、高い容量を示します。しかも下図に示すように、従来の電極物質である活性炭とは異なり、電流密度を大きくしても容量が低下しない(つまり高速充放電が可能)ことがわかります。これは、材料内部のイオンの移動が極めて容易なためです。


        
     図  カーボンナノジャングルジムと従来の活性炭のレート特性の比較

文献
・Hirotomo Nishihara*, Hiroyuki Itoi, Taichi Kogure, Peng-Xiang Hou, Hidekazu Touhara, Fujio Okino, Takashi Kyotani, "Investigation of the Ion Storage/Transfer Behavior in Electrical Double Layer Capacitor by Using Ordered Microporous Carbon as a Model Material", Chem. Eur. J., 15, 5355-5363 (2009)
・Hiroyuki Itoi, Hirotomo Nishihara*, Taichi Kogure, and Takashi Kyotani, "Three-Dimensionally Arrayed and Mutually Connected 1.2 nm-Nanopores for High-Performance Electric Double Layer Capacitor", J. Am. Chem. Soc., 133, 1165-1167 (2011).




研究 Pick Up  カーボンナノジャングルジムの水素吸蔵への応用

カーボンナノジャングルジムは比表面積が約4000m2/gもあるため、物理吸着により大量の水素を吸蔵します。30℃、34 MPa(約340気圧)での水素吸蔵量は2.2 wt%に達します。これはカーボン材料としては世界一の値です。一方、燃料電池自動車用の水素貯蔵材料としては、5〜6 wt%の貯蔵量が必要とされています。そこで我々は、カーボンナノジャングルジムをベースとして、ここに水素貯蔵量を促進する第3成分を添加することで、更なる吸蔵量の増加を目指しています。


              
        図  カーボンナノジャングルジムによる水素吸蔵の概念図

文献
・Hirotomo Nishihara*, Peng-Xiang Hou, Li-Xiang Li, Masashi Ito, Makoto Uchiyama, Tomohiro Kaburagi, Ami Ikura, Junji Katamura, Takayuki Kawarada, Kazuhiko Mizuuchi, Takashi Kyotani, "High Pressure Hydrogen Storage in Zeolite Templated Carbon", J. Phys. Chem. C, 113, 3189-3196 (2009).




研究 Pick Up  疎水性と導電性をもつ炭素被覆メソポーラスシリカの調製

我々は、メソポーラスシリカの全細孔表面を厚さ1 nm以下の極めて薄い炭素薄膜で完全に被覆する技術を開発しました。合成スキームを図1に示します。メソポーラスシリカ細孔表面のシラノール基を芳香族アルコールと反応させ、これを炭化するというものです。炭素被覆前後のメソポーラスシリカSBA-15の写真を図2に示します。炭素被覆によりメソポーラスシリカの白色粉末は完全に黒色になります。また電子顕微鏡写真から、炭素被覆により細孔径が僅かに減少していることがわかります。炭素被覆により、元々絶縁性であったメソポーラスシリカは導電体になります。また、メソポーラスシリカは親水性ですが、炭素被覆後には疎水性に変化します。さらに、メソポーラスシリカは水中での耐久性が問題ですが、炭素被覆によりこれが劇的に向上します。炭素被覆メソポーラスシリカはユニークな電極材料として、バイオセンサー、人工光合成、バイオ燃料電池などへの応用が期待できます。


            
           図1  炭素被覆メソポーラスシリカの合成スキーム
    
      図2  メソポーラスシリカSBA-15の炭素被覆前後の写真とFE-SEM像

文献
・Hirotomo Nishihara*, Yu Fukura, Kouta Inde, Katsuyuki Tsuji, Masataka Takeuchi and Takashi Kyotani, "Carbon-coated mesoporous silica with hydrophobicity and electrical conductivity", Carbon, 46, 48-53 (2008).
・Taeri Kwon, Hirotomo Nishihara*, Yu Fukura, Kouta Inde, Norihiko Setoyama, Yoshiaki Fukushima, Takashi Kyotani, "Carbon-coated mesoporous silica as an electrode material", Microporous Mesoporous Mater., 132, 421-427 (2010).




研究 Pick Up  ホウ素ドープ炭素、窒素ドープ炭素の合成と応用

我々の研究室では、炭素(C)にホウ素(B)や窒素(N)をドーピングすることで、従来とは異なる機能をもった新しい炭素材料の開発を行っております。例えば下図に示すように、ホウ素や炭素をドープした炭素は電気化学キャパシタの電極として、従来の炭素よりも高い性能を示します。


     
    図  炭素膜およびホウ素、窒素をドープした炭素膜で被覆したAAOの電気化学キャパシタ性能

文献
・"The Template Synthesis of Double Coaxial Carbon Nanotubes with Nitrogen-Doped and Boron-Doped Multiwalls", Quanhong Yang, Weihua Xu, Akira Tomita, and Takashi Kyotani, J. Am. Chem. Soc., 127, 8956-8957 (2005).
・"Synthesis of a Nitrogen-Containing Microporous Carbon with a Highly Ordered Structure and Effect of Nitrogen -Doping on H2O adsorption", Peng-Xiang Hou, Hironori Orikasa, Toshiaki Yamazaki, Koichi Matsuoka, Akira Tomita, Norihiko Setoyama, Yoshiaki Fukushima, and Takashi Kyotani, Chem. Mater., 17, 5187-5193 (2005).
・Taeri Kwon, Hirotomo Nishihara*, Hiroyuki Itoi, Quan-Hong Yang, Takashi Kyotani, "Enhancement Mechanism of Electrochemical Capacitance in Nitrogen-/Boron-Doped Carbons with Uniform Straight Nanochannels", Langmuir, 25, 11961-11968 (2009).



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